初めて自分が子どもを授かった時、生まれてきた後の生活を想像してとてもワクワクしたことを覚えています。この子と一緒にどんなことをして楽しく過ごすのだろう?何が好きになるのかな。どこへ連れて行ってあげよう、そんなことをたくさん考えていました。
実際、出産後はバタバタで目の前の現実に立ち向かうので精一杯な毎日でしたが…しばらくして、やっとまた少し考える余裕ができてきました。
さて、これからこの子にどんなことをさせてあげよう…?

わたしが子どもにさせようと思っていた習い事の最初の大まかな分類です。
- お勉強系
- 運動系
- 音楽(楽器系)
実際に自分の子どもを分析してみて、何が得意そうかというのは、もう赤ちゃんの時に分かります(好き嫌いも多少は判断つきます)。
また別記事にする予定ですが、環境の影響も大きいですが、同じ条件のはずの兄妹でも傾向は違うのが面白いところです。
今回は3つ目の音楽(楽器系)の習い事について書きたいと思います。
なぜ音楽か。理由はたくさんあります。

感性・芸術性を育てる
小さな頃から音楽に触れて、実際演奏することで、様々な感性が養われます。ただ楽器を弾けるようになるだけではなく、音楽自体を楽しめる人間になって欲しいと思いました。

指先を鍛える
なぜ歌ではなく、楽器なのか。理由はこれです。手は第2の脳と言われています。特に小さな頃は、脳の発達が著しいです。なんと脳の機能のほぼ80%が3歳までに出来上がってしまうそう!6歳では9割の発達を遂げてしまうのです。この間に指先を訓練するのはとても良いことだそうで、ぜひ早いうちに日常的に指先を使うことを常習化することをお勧めします。
バイオリンは、指先の力を強くしないと(弦を押さえる指)いい音が出せません。習い始めは、とにかく指をしっかり押さえられる訓練を積み重ねます。その意味で小さいうちから始めると、脳にもいい効果があるのがよくわかります。
我慢強さ・続ける力を身につける(精神面への効果)
音楽はとにかく継続です。他の習い事は、多少日にちが空いても、お家で練習できなくても、お稽古に行き続ければなんとかなるものも多いです(もちろん自主練習をすることが最善ですが)。プールは普通のおうちにないでしょうし、サッカーもマンションや狭い場所では練習しづらいかもしれません。
しかし音楽は、毎日お稽古しないと上達がしづらいのです。5分でも10分でも楽器に触らないと、あっという間に習ったことを忘れてしまいます。そして1曲を仕上げるためにかける時間はとても長いです。できないところはできるまで、何度も何度も練習します。そうやってその曲の合格をもらった時の達成感は計り知れないものなのでしょう。「次の曲に進みたい!」「あの曲が弾けるようになりたい!」子供達の中で目標が生まれ、そのために努力する楽しさを身につけられるのが楽器のお稽古です。

3歳で始めた我が子たちも、最初は5分とか短い時間ですが毎日必ずバイオリンに触っていました。最初なんてそんなに長くするような練習もないし、3歳の普通の子供が30分も立って集中して練習なんてできません。
でもとにかく毎日毎日、休まず少しずつでも弾き続けました。そうすると、子供たちにとってはそれが当たり前の習慣となります。10歳になった息子は、今も何も抵抗なく毎日自分で練習しています(現在の練習時間は1時間半〜2時間、本気でやっている子たちから比べるとかなり短い方だと思います)。8歳の娘はまだヘルプが必要で、わたしが手伝いながら一緒にお稽古して、それでも1時間は軽く超えてしまいます。
バイオリンですので、旅行の時も持ち運べるのが便利でした。日本のホテルでも旅館でも迷惑にならない時間帯(だいたい朝ごはん後9−10時、宿泊客が部屋から出ていくだろう時間帯)に練習していました。

過去1ヶ所だけ、お部屋で弾くのはやめてくださいとチェックインの時に言われたことがありますが、そういう時は車や近くの公園で弾くようにしていました。そうすることで、意識の中で必ず弾かないと気持ち悪いというようになるようです。子供の順応性ってすごいですね!
音楽は算数!
音楽は実は算数なんです。

具体的な話をしますと、楽譜を読める方はご存知だと思いますが、例えば1小節の中に入る拍数は、曲により同じです。4分の4拍子ですと、四分音符が4拍分。どんなに細かい音符に分かれても、足すと絶対に4拍になるのです。ざっくりな説明ですが…
これを楽譜が読める方は、自然に頭の中で理解してしまうのです。感覚でわかるのです。小さい頃からそれが自然に身についていくってすごいことだと思いませんか。
そして音楽は文学
曲にもよりますが、楽譜を見ていると様々な物語が浮かんできます。単純な解釈だと悲しい曲だったり、恋している曲だったり…曲を聴きながら、自分の想像で物語を思い浮かべるのも楽しい作業です。大昔に作られた作曲家の頭の中が見えてくるかもしれません。時空を超えて過去の偉人たちと繋がれるなんて、素晴らしいですよね。
まだ割と初心者が弾くシューマン作曲「二人の擲弾兵」という曲は、とてもはっきりとした物語があります。
つめたき 囚獄(ひとや)いでて
帰る兵士 二人、
故郷(ふるさと) 近づきしころ、
いたみし心に
国の便りと聞きしは
「フランスついに敗れ
大軍崩れ 今は はた
皇帝 捕われし」と。
悲しき便り 聞きて
涙せし二人、
語りつ
先はまだあるのですが、捕虜となったフランスの兵士が、解放されて故郷に戻ってくるときの様子を曲にしています。最後はお互い鼓舞して終わるのですが、途中転調して短調になってとてもドラマティックな曲です。当時5歳だった娘はとても大好きな曲でいつもノリノリで引いていました。
歴史の勉強にもなる
音楽を通して学ぶことはとても多く、音楽の背景にある歴史や、作曲家たちの生い立ちにも興味を持ちます。この人がこの曲を作った頃はこんな時代といった感じで、色々なことが頭の中で結びついていきます。特に男の子は歴史に強く惹かれる子も多いので、のめり込むときっとどんどんはまっていくかもしれません。

一生の宝物になる
わたしの中ではこれが一番の大きな理由かもしれません。
何か1つ楽器をマスターしておくと、何かあるたびに自分の気晴らしや気分転換になるのです。
これが結構大事で、誰しもが経験があるかと思いますが、何か仕事をしていて息詰まると別のことをすると気持ちをリセットできたり閃きがあったりするものです。
それが人によって違うと思うのですが、ジョギングだったり、料理だったり、絵を描くことだったり…おそらく映画や食べるなどの受動的なものより、自分で何かをする能動的なものの方がパフォーマンスが大きい場合が多いような気がします。(休憩でデザートなんて食べたら、眠くなっちゃうなんてことも!)
何もないと辛いものです。そこで思うように演奏できる楽器が1つあると、すっと切り替えができてストレスが和らぐ効果も大きいです。仕事だけに限らず日々日常で楽器を演奏できる時間があることで、癒しの時間になるのです。
将来歳を取っても、何かある時何もない時に、ふと自分の楽器に手が伸びる…素敵ですよね。
コミュニケーションの手段になる
これも大きな理由の一つです。
バイオリン1つあると、「ちょっと弾いてみてよ」と言われることは多々あります。そして弾くとたいがいとても喜んでいただけます。
子ども達が小さい頃は、なるべく人前で弾かせるようにしてきました。お友達の家で聞いてもらったり、お呼ばれした親戚の前で演奏したり…時には自分たちでリサイタルを企画して(自分の誕生日などで)30分ほどの演奏をよくしていました。
そうすると、ピアノを弾ける子が「これ一緒にやろう」とか、「今度わたしの誕生日で弾いて!」とお願いされるようになりました。実際、レストランで開かれたお誕生日のパーティに呼ばれて兄妹で演奏させていただいた時は、とても感謝していただいたのですが、こちらの方が本当にステキな思い出となりました。
個人の先生が時々気まぐれに開催するリサイタルでは、最年少5歳の娘からハイスクールのお兄さんお姉さんまでが一緒になって、10日ほど練習します。ここでまた顔が繋がって、次のリサイタルで!となっていくのです。
毎年夏休みに帰国して、子ども達が幼稚園までお世話になったお教室で再会して一緒にお稽古したり、合宿に便乗させていただいたり…大きなサマースクールには毎年参加して、毎年1回の再会を喜び合い、数日間のレッスンに励みます。
また、わたしはインスタグラムで色々な国のたくさんのバイオリンキッズと知り合うことができました。いつもその子達の成長を見て、バイオリンキッズのママたちと交流し合い、情報交換したり悩み相談したりします。お互い会ったことはないけれど、そのうちその国を訪ねた時は必ず彼らに会いに行くでしょう。
音楽を通じて、どんどん世界は広がって繋がっていきます。音楽は競争するものではなく、優劣を競うものではなく、お互いの心を通わせる手段の1つでもあると思います。
きっと大人になった時、ここで一緒だっただれかとまた再会して演奏したり、はたまた語り合ったりするかもしれません。子ども達にはそんな楽しい世界を経験していってもらいたいです。
音楽のある暮らし
長くなりましたが、わたし個人がバイオリンを子ども達に選んだ理由でした。みなさんのこれからの参考になれば、とても嬉しいです。
みなさまとお子様のこれからの暮らしが、実り多く幸せなものとなりますように!そして、もしバイオリンを選んだら…どこかでお会いできるのを心より楽しみにしております!
